これまでもご紹介してきたように、今、平屋のよさを再発見しようという気運が高まっているようですが、どうしてなのでしょう?
国土交通省の調査によると、2021年中に岡山県内で新築された居住専用住宅の総数約6850戸のうち、平屋建の戸数は約920戸(13.4%)と、5年前の2016年の総数約7380戸に対し約560戸(7.5%)に比べ大きく増えています。
たしかに、家事動線が平面的で暮らしやすい、構造的に強い、などのメリットもありますが、一方で、広い土地が必要、水害に弱い、プライバシーを守りにくい、などのデメリットもあり、単純にメリットとデメリットを比較しただけでは平屋を選ぶ決定的な理由がなかなか見えてきません。
そこで、少し目線を変えて、ライフスタイルに対する考え方の変化に着目して考えてみたいと思います。
着目すべきはコンセプトの変化?
まず第一に、近年の家族の関係に対する考え方の変化も、平屋が選ばれる背景にはありそうです。
特に、子どもたちが育つ環境としては、完全に独立した子ども部屋を用意するよりも、家族全員がゆるやかに一つの空間を共有し、常に互いのコミュニケーションが確保できる環境で育つ方が良いという考え方があります。
このような考え方に立てば、平屋の方が望ましい暮らしのイメージに近いのではないでしょうか。
また、近年の、いつ水害が起こっても不思議ではないという状況がひとつの契機になっているかもしれません。
なぜなら、水害は地震と違い予見の可能性が高い災害です。自治体の取り組みも進み、適切な情報収集と早期の避難で、安全確保ができる可能性が高まっています。
一方で、地震はまったく予測不可能です。いつ、どこで起きるかわからないため、対処のしようがありません。
ならば、構造的に強く倒壊の危険が低い平屋の方を選ぶという考え方は、理にかなっているように思われます。
そして最後に、平屋は垂直移動する必要がなく、子どもやお年寄り、また足の不自由な方などにやさしいという側面があります。
今、元気で健康だからといって、いつまでも若くいられるわけではないし、またいつ何どき病気や怪我で車椅子を使うことになるかもわからない。
先の見えにくい現代、そういったリスクに備える感覚をもつ方が増えてきているのかもしれません。
リスク管理をきっちり考慮しながら、長いスパンで家族の時間を大事に考え、快適に過ごす。
平屋が選ばれる背景にはそのようなライフスタイルのコンセプトがあるのかもしれません。
(ライターManpuk Housing)