前回、平屋を選ぶ人々が少しづつ増えている理由を、ライフスタイルのコンセプトとの関係で考えてみました。
その中で、家族の関係に対する考え方の変化、つまり家族の時間を大事にしたいと考える方が増えているのではないか、という予測を立ててみましたが、そこにはひとつ注意すべき問題が隠れていそうです。
それは、居住空間をどういう考え方で組み立てていくか、という問題。
わかりやすく言うなら、家づくりのアプローチを、形と機能から入るのか、生活そのもののあり方から入るのか、という問題です。
いくら平屋だからといって、寝室、子供部屋、書斎・・・と、独立した個室(コンパートメント)を縦横につなぎ合わせて行っても、家族の時間を共有する空間なんて、できそうにもありません。でも、この方が必要な機能が形として見えやすいので、計画するときにはついつい、このアプローチをとってしまいそうです。
でもこれでは、単に上に伸ばしてない形というだけで、2階建てでも平屋でもあまり関係がなさそうです。
とらわれない、自分らしいアプローチを
そこで、形から入るのではなく、どんな生活をしたいか、というところから入ってみてはどうでしょう。
昼間には家族みんなでゴロゴロしたり、ゲームをしたり、思い思いに過ごせる場所が、テーブルを出せばそのままご飯を食べる場所、片付けて布団を敷けばそのまま寝室に。
…と言えばまるでワンルームのアパートのようですが、こんな、家族がいつも時間と空間を共有できる雰囲気を大切にしたいという思いから出発すれば、ほら、空間を機能ごとにすべて壁で隔てて、個別にベッドや机や本棚を用意する必要が本当にあるかどうかから考えることもできそうです。
せっかく平屋は構造的に強いという利点があるのだから、わざわざ最初から壁で仕切って行かなくても、生活のイメージから空間をどう使うかを考えてみる。
その上で、例えばやっぱり一定のプライバシーは確保したいなら、どう空間を区切るか、ドアか、ふすまか、あるいは柱や小壁の配置、場合によっては棚でもいいかもしれない。
それも、今じゃなくても、子供が大きくなったときに手を加える余地を残しておくのでもいいかもしれない。
家の機能は、家具は、寝具は、家族の関係は、こうじゃなければいけない!…
そんな既成観念にとらわれない自由な発想からアプローチできるのが、平屋を選びたくなる最大の魅力なのかもしれません。